2026年FIFAワールドカップが、いよいよ現実味を帯びてきた。北米3カ国を舞台にしたこの大会に向けて、ベルギー代表はいま大きな転換期を迎えている。かつてFIFAランキング1位に君臨した「黄金世代」の面々がフィナーレに向かう一方で、若い世代が猛烈な勢いで台頭してきている。ルディ・ガルシア監督のもと進むチームの刷新は、単純な若返りじゃない。戦術的な柔軟性と、個の質を最大化するための構造改革だ。
現在のFIFAランキング9位という位置は、依然として世界トップクラスである証明。ただ、上位を目指すなら課題が山積しているのも事実。本記事では各ポジションの候補選手と現在の状況を整理し、W杯本番に向けた「赤い悪魔」の展望を徹底解説する。
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代表が取り巻く環境
ガルシア監督が就任してから、チームの雰囲気は明らかに変わった。デ・ブライネやルカクといったレジェンドたちへの依存度を下げ、「次の核」を育てながら戦うスタイルへのシフトが進んでいる。欧州予選での安定したパフォーマンスは、その試みが一定の成果を上げていることを示している。
とはいえ、課題もある。主力選手の負傷が相次いでいるのだ。ティーレマンス、ドク、デ・ケテラーレ、テアテと、「当確」クラスの面々がここにきて離脱を余儀なくされている。特にW杯という短期決戦では、コンディション管理が命取りになる。直前の数週間でどれだけ戦力が揃うかが、グループステージを突破できるかどうかに直結する問題だ。
ベルギーサッカー連盟(RBFA)の長期強化方針と、今まさに爆発しようとしている若手の台頭。このタイミングで大会が来ることは、ある意味では歴史的なチャンスとも言える。
GK:世界最高の守護神と、200cmの超新星
| 選手名 | 年齢 | 所属クラブ | 市場価値 | 選出見込み |
|---|---|---|---|---|
| ティボ・クルトワ | 33 | レアル・マドリード | €18.0m | ◎当確 |
| セネ・ラメンス | 23 | マンチェスター・U | €25.0m | ○高 |
| マイク・ペンデルス | 20 | ストラスブール | €15.0m | ○高 |
| マールテン・ファンデフォールト | 24 | RBライプツィヒ | €10.4m | △中 |
| マッツ・セルス | 34 | ノッティンガム・F | €6.0m | △中 |
注目選手:マイク・ペンデルス(20歳)
正直、この名前を知らなかった人はそろそろ覚えておいた方がいい。身長200cmという桁外れのサイズに加えて、現代GKに求められる足元の技術もしっかり持っている。チェルシーからストラスブールへのローン移籍で実戦経験を積みながら、市場価値はすでに€15.0mに到達。クルトワの後継者として、W杯というビッグステージで本大会の空気を吸わせておくのは理にかなった判断だ。
クルトワ自身は負傷明けでもパフォーマンスに陰りがなく、レアル・マドリードで主将格の存在感を見せている。GK正面の序列は揺るぎない。ラメンスとペンデルス、どちらをバックアップに選ぶかがガルシア監督の最初の「難しい決断」になりそうだ。
DF:再構築された壁と、左サイドに生まれた懸念
| 選手名 | 年齢 | 所属クラブ | 市場価値 | 選出見込み |
|---|---|---|---|---|
| ゼノ・デバスト | 22 | スポルティングCP | €30.0m | ◎当確 |
| アーサー・テアテ | 25 | E・フランクフルト | €24.0m | ◎当確(負傷中) |
| ヴォウト・ファエス | 27 | レスター・シティ | €12.0m | ○高 |
| コニ・デ・ウィンター | 23 | ACミラン | €22.2m | ○高 |
| ティモシー・カスターニュ | 30 | フラム | €14.3m | ○高 |
| マキシム・デ・カイパー | 25 | ブライトン | €25.7m | ○高 |
| ジョアキン・セイス | 20 | クラブ・ブルッヘ | €19.8m | ○高 |
| ナタン・ンゴイ | 22 | リール | €9.3m | △中 |
| アミーン・アル・ダヒル | 24 | シュトゥットガルト | €4.0m | △中 |
| トーマス・ムニエ | 34 | リール | €1.3m | △中 |
| ブランドン・メシェレ | 33 | クラブ・ブルッヘ | €3.0m | ▲低 |
| アクセル・ヴィツェル | 37 | ジローナ | €1.4m | ▲低 |
注目選手:ゼノ・デバスト(22歳)
スポルティングCPで主力として欧州舞台を戦い抜いているデバストは、旧来のベルギー人CBのイメージとは少し違う。ビルドアップの起点になれる技術と戦術眼を持っており、ガルシア監督が志向するポゼッションスタイルとの相性が抜群だ。22歳で市場価値€30.0mというのは、「将来有望」じゃなくて「もう完成されてる」という評価に他ならない。
ただ、左利きCBのアーサー・テアテが膝の負傷で離脱中というのは痛い。彼がいなくなるとビルドアップのテンポが落ちることは予選のデータからも明らかで、本大会までの回復が急務だ。サイドバックでは20歳のセイスが急台頭しており、ベテランのムニエの序列を脅かしている。
MF:デ・ブライネの集大成と、新世代の心臓
| 選手名 | 年齢 | 所属クラブ | 市場価値 | 選出見込み |
|---|---|---|---|---|
| ケヴィン・デ・ブライネ | 34 | マンチェスター・C | €15.0m | ◎当確 |
| アマドゥ・オナナ | 24 | アストン・ヴィラ | €47.7m | ◎当確 |
| ユーリ・ティーレマンス | 28 | アストン・ヴィラ | €40.4m | ◎当確(負傷中) |
| シャルル・デ・ケテラーレ | 24 | アタランタ | €42.0m | ○高(負傷中) |
| アルネ・エンゲルス | 22 | セルティック | €15.0m | ○高 |
| アレクシス・サーレマーケルス | 26 | ACミラン | €18.8m | ○高 |
| ニコラス・ラスキン | 25 | レンジャーズ | €12.3m | ○高 |
| アルチュール・フェルメーレン | 21 | マルセイユ | €27.7m | △中 |
| ハンス・ヴァナケン | 33 | クラブ・ブルッヘ | €4.9m | △中 |
| アスター・ヴランクス | 23 | サッスオーロ | €7.0m | △中 |
| シャルル・ファンホッテ | 27 | ニース | €7.3m | △中 |
| ヨルティ・モキオ | 17 | アヤックス | €12.3m | △中 |
注目選手:アマドゥ・オナナ(24歳)
195cmのフィジカルとプレミアリーグ仕込みのデュエル勝率。このふたつを兼ね備えたアンカーは、現在のベルギー代表の中盤に欠かせない存在だ。市場価値€47.7mはチームトップクラスで、アストン・ヴィラでの活躍がその数字を証明している。デ・ブライネが自由にプレーできるのも、オナナが後ろで泥臭い仕事をしてくれているからだという見方は強い。
そのデ・ブライネ(34歳)については、もう語り尽くせないほどの天才だが、今大会が彼にとって最後のW杯になる可能性が高い。ガルシア監督にとって「デ・ブライネを最も輝かせる配置を考える」ことが最優先課題のひとつだというのは、周囲の関係者も認めるところだ。
セルティックで圧倒的な存在感を放つアルネ・エンゲルス(22歳)は、中盤のあらゆる局面に顔を出せる多機能型MF。プレースキックの精度も高く、デ・ブライネの負荷を分散させるキーマンになりそうだ。
FW:ドクの独走とルカクの重圧、そして爆発する若手
| 選手名 | 年齢 | 所属クラブ | 市場価値 | 選出見込み |
|---|---|---|---|---|
| ジェレミー・ドク | 23 | マンチェスター・C | €68.0m | ◎当確(負傷中) |
| ロメル・ルカク | 32 | ナポリ | €15.0m | ◎当確 |
| ロイス・オペンダ | 26 | ユヴェントス | €43.7m | ◎当確 |
| レアンドロ・トロサール | 31 | アーセナル | €19.9m | ○高 |
| マリック・フォファナ | 20 | リヨン | €38.5m | ○高 |
| ドディ・ルケバキオ | 28 | ベンフィカ | €21.5m | ○高 |
| ミカ・ゴッツ | 20 | アヤックス | €18.3m | △中 |
| ロメオ・フェルマント | 22 | クラブ・ブルッヘ | €9.4m | △中 |
| ディエゴ・モレイラ | 21 | ストラスブール | €22.9m | △中 |
| ジュリアン・デュランビル | 19 | バーゼル | €7.3m | ▲低 |
| ミキ・バチュアイ | 32 | ガラタサライ | €3.0m | ▲低 |
注目選手:マリック・フォファナ(20歳)
リーグ・アンで覚醒したこの20歳は、2025/2026シーズンのリヨンで圧倒的なパフォーマンスを見せている。ドリブルの質はリーグのウィング部門で上位5%という評価で、代表でも予選のリヒテンシュタイン戦で「個の力で局面を壊せる」ことを示した。一部の専門家からは「ドクを右に回してでもフォファナを左で使うべき」という議論まで出始めており、そのポテンシャルは計り知れない。
ルカク(32歳)は依然としてベルギー史上最高の得点源として君臨しているが、ルカク一辺倒だったかつての時代と大きく違うのは、オペンダ(26歳)という「スピードの暴力」が加わったことだ。ユヴェントスで成長を続けるオペンダとの同時起用が機能すれば、攻撃陣の破壊力は2018年大会を超える可能性がある。
選考微妙:才能はあるが「計算できるか」が問われる面々
W杯のような短期決戦で監督が最も恐れるのは、大会期間中に戦力計算が狂うことだ。以下の選手たちは実力は折り紙付きだが、それぞれ異なる事情を抱えている。
ジュリアン・デュランビル(19歳) は、ベルギーサッカー界が「10年に一度の天才」と称える逸材だが、キャリアを通じて負傷との戦いが続いている。ドルトムントからバーゼルへのローン移籍も、出場機会とコンディション安定を求めてのことだった。2025年にも肩の脱臼という不運に見舞われており、本大会まで「計算できる選手」であることを証明できなければ、才能を認められながらも落選という結末が十分ありえる。
アクセル・ヴィツェル(37歳) はジローナで依然としてプレーの質を保っているが、37歳という年齢は過密日程での回復力という面で大きな懸念を生む。より走れる若手MFが台頭しているだけに、レジェンドが最終メンバーから漏れるという「衝撃的な決断」の可能性も否定できない。
アミーン・アル・ダヒル(24歳) はポテンシャルの高さを誰もが認めるが、シュトゥットガルトでの稼働率がどうしても上がってこない。CB枠がほぼ埋まっている現状で、怪我がちな選手を連れていくリスクをガルシア監督がどう判断するかが焦点だ。
トーマス・ムニエ(34歳) は経験豊富で現在はリールで重用されているが、ハムストリングの負傷を繰り返している。20歳のセイスの急成長が著しく、ムニエが代表から離れている間にセイスが右SBの定位置を確保してしまえば、大ベテランの居場所が消えるかもしれない。
まとめ:完成形に近づく「赤い悪魔」が北米で歴史を作るとき
ベルギー代表は、W杯2026に向けて極めて健全な世代交代を進めながら、旧黄金世代の残り火で戦える最後のチャンスを手にしている。デ・ブライネとルカクが高いレベルを維持している「今このタイミング」に、フォファナやデバスト、オナナといった次の核が揃ってきた。これはある意味、歴史的な幸運と言えるかもしれない。
市場価値の数字を見ても、ドク(€68.0m)、オナナ(€47.7m)、オペンダ(€43.7m)と20代前半の選手たちが世界トップレベルの価値を持っている。このチームの潜在的な爆発力は、現在のランキングが示す以上のものがある。
最後の分岐点になるのは、主要選手の負傷回復状況と、ガルシア監督が「経験」と「勢い」のどちらに賭けるかという判断だ。ヴィツェルやムニエのような経験豊富なベテランを残すか、セイスやエンゲルスのような勢いのある若手に賭けるか。その答えが出るのは、メンバー発表の瞬間だ。
2026年、北米の地でベルギーが狙うのは史上初のW杯制覇。ベテランの技と若手の才能が完璧に噛み合ったとき、「赤い悪魔」は本当の意味で世界一の座に手が届くはずだ。
本記事は2026年2月時点の情報をもとに構成しています。選手のコンディションや所属クラブでの状況は日々変化するため、最新情報は随時ご確認ください。